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バリアフリーの目的は「4種類のバリア(障壁)」をなくす事

2025/03/26

バリアフリー4種類

バリアフリーとは、障がいのある人や高齢者をはじめ、すべての人が快適に生活し、社会に参加できるようにするための取り組みです。私たちの身の回りには、移動や情報取得、社会参加を妨げる様々なバリア(障壁)が存在します。

これらのバリアは、以下の4つの種類に分類されます。

①物理的バリア:建物・交通機関などの移動に関する障壁
②制度的バリア:法律や制度の不備による障壁
③情報的バリア:情報取得・コミュニケーションの障壁
④意識的バリア:社会の理解不足による障壁

この4種類のバリアに対して、それぞれバリアフリー(障壁の解消)を推進することにより、障がいの有無にかかわらず、すべての人が自由に行動し、情報を得て、社会の一員として活躍できる環境が整います。

バリアフリーは、特定の人のためだけのものではなく、誰にとっても暮らしやすい社会を作るために欠かせない考え方です。

本記事では、4種類のバリアフリーへの取り組みについて詳しく解説し、それぞれの特徴や意義、具体的な取り組みについて紹介します。バリアフリーの本質を理解し、より良い社会を実現するための一助として、本記事をぜひ参考にしてください。

バリアフリーの目的は「物理的・制度的・情報的・意識的」の4種類のバリアの解消

「バリアフリー」とは、社会に存在する特定の障壁(バリア)を取り除き、障がい者や高齢者をはじめとして誰もが生活しやすい環境を整えることを指します。

しかし、解消すべきバリアには様々な種類があり、これらは大きく4つに分類されます。

①物理的バリア(建物・交通機関などの移動に関する障壁)
②制度的バリア(法律や制度の不備による障壁)
③情報的バリア(情報取得・コミュニケーションの障壁)
④意識的バリア(社会の理解不足による障壁)

バリアフリーの目的は、これらのバリアを解消し、誰もが平等に生活できる環境を整えることにあります。以下の表で、それぞれのバリアの特徴と、それを解消するための取り組みを整理します。

◆4種類のバリアと、それを解消するバリアフリーの取り組み

バリアの種類 障壁の内容 影響を受ける主な対象者 解消するバリアフリーの取り組み 主な関連法規・ガイドライン
物理的バリア 建物や交通機関の構造が原因で、移動や利用が困難になる 車いす利用者、高齢者、視覚障がい者 など ①物理的バリアフリー
(スロープ・エレベーター・ノンステップバス・点字ブロック など)
バリアフリー法
建築基準法
制度的バリア 法律や制度が整っておらず、社会的な支援が受けにくい 障がい者、高齢者、介護者、求職者 など ②制度的バリアフリー
(バリアフリー法、障害者雇用促進制度、合理的配慮の義務化 など)
障害者差別解消法
障害者雇用促進法
情報的バリア 視覚・聴覚などの障害により、情報を得るのが難しい 視覚障がい者、聴覚障がい者、高齢者 など ③情報的バリアフリー
(音声案内、手話通訳、字幕付き放送、Webアクセシビリティ)
障害者差別解消法
JIS X 8341(Webアクセシビリティ)
意識的バリア 社会の理解不足や偏見により、生活や活動の制限が生じる 障がい者、LGBTQ+、外国人、高齢者、精神疾患のある人 など ④意識的バリアフリー
(ダイバーシティ教育、共生社会の推進、ユニバーサルデザインの普及)
ユニバーサルデザイン推進施策
SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」

通常、バリアフリーは建物や交通機関を利用しやすくするなど物理的な側面だけで捉えられることが多いですが、この表が示すように、実は法律・情報・社会の意識など様々な分野に及んでいます。

本記事では、4種類のバリア(障壁)に対するバリアフリーの取り組みを、それぞれ「①物理的バリアフリー」「②制度的バリアフリー」「③情報的バリアフリー」「④意識的バリアフリー」と分類し、詳しく解説してまいります。

 

①移動の自由を実現する「物理的バリアフリー」

物理的バリアフリーとは、建物や交通機関の移動の障壁を取り除き、誰もが安全かつ快適に利用できる環境を整える取り組みです。

これは、単なる段差解消にとどまらず、エレベーターやノンステップバスの導入など、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れた設計が求められます。

移動の自由が確保されることで、高齢者や障がい者だけでなく、ベビーカーを利用する人や大きな荷物を持つ人々にも恩恵がもたらされ、都市の利便性向上や経済活性化にもつながります。

近年、日本では物理的バリアフリーの取り組みが進み、全国各地でバリアフリー対応の駅や公共施設が増加しています。

◆駅や公共交通機関のバリアフリー化

・鉄道駅のホームドア設置、バリアフリー改札口の整備
・主要駅でのエレベーター設置率向上(国土交通省)
・都市部でのノンステップバスの導入推進

◆公共施設や商業施設のバリアフリー化

・多機能トイレの設置
・触知案内板や音声ガイドの導入
・映画館・美術館での聴覚障害者向けサービスの拡充

国土交通省の発表によると、2022年度末時点で、全国の1日3,000人以上が利用する鉄道駅のうち、約96%においてエレベーターやスロープなどの移動円滑化設備が設置されています。また、鉄道駅のホームドア設置率は約50%に達し、バリアフリー対応が着実に進んでいます。

参考:エレベーター等による駅のバリアフリー化が進捗 ~令和2 年度末 鉄軌道の移動等円滑化に関する実績の調査結果概要~(国土交通省)

しかし、地方ではバリアフリー対応が進んでいない施設が多く、特に過疎地域では予算の確保が課題となっています。

また、物理的なバリアが取り除かれても、適切な案内表示がない、利用方法が分かりにくいといった「情報のバリア」も残っており、視覚障害者向けの音声案内の不足やバリアフリートイレの場所が分かりにくいといった問題が指摘されています。

では次に、法律や制度の面からバリアフリーを支える「制度的バリアフリー」について詳しく見ていきます。

 

②法律と制度で支える「制度的バリアフリー」

制度的バリアフリーとは、法律や社会制度を整備し、障がい者や高齢者を含むすべての人が公平に生活し、社会に参加できる環境をつくる取り組みです。

法的な整備により、企業や行政機関が一定の基準を満たす対応を行うことが義務化され、社会全体でのバリアフリー意識が高まっています。また、経済的支援や雇用促進の制度を通じて、障がい者の社会参加を後押しする役割も果たします

近年は、日本でも制度的バリアフリーの推進が進み、以下のように様々な法律や制度が整備されています。

◆バリアフリーを推進する主な法律

バリアフリー法(高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)
公共施設や交通機関におけるバリアフリー基準を策定し、建築や改修の際の指針となる。
障害者差別解消法
障がい者への合理的配慮を義務化し、障がいを理由とした不当な差別を禁止。
障害者雇用促進法
一定規模以上の企業に対し、障がい者雇用を義務化し、雇用率未達成の場合には納付金制度を適用。

◆障がい者や高齢者を支援する社会制度

・合理的配慮の提供義務
企業や行政機関が、障がい者のニーズに応じた適切な対応を行うことを求める。
・就労支援制度(ハローワーク、障がい者就労支援センターなど)
障がい者の就労機会を広げるための公的支援。
・公共施設、交通機関の利用支援(福祉タクシー券、移動支援制度など)
移動が困難な人のための補助制度。

日本政府の発表によると、2023年度時点で、民間企業の障がい者実雇用率は2.33%となり、法定雇用率(2.3%)をわずかに上回っています。また、法定雇用率を達成している企業の割合は50.1%に達し、前年より増加しました。企業で雇用されている障がい者数は64万2,178人 で、前年比4.6%増となり、20年連続で過去最高を更新しています。

しかし、制度が整備されても、法定雇用率未達成の企業は53,963社に上り、その多くが中小企業です。特に、障がい者を1人も雇用していない企業は31,643社あり、未達成企業の約58.6%を占めています。法定雇用率を達成するためには、中小企業での雇用促進が今後の課題となります。

参考:令和5年 障害者雇用状況の集計結果(厚生労働省)

次に、情報へのアクセスを支える「情報的バリアフリー」について詳しく見ていきます。

 

③情報格差をなくすための「情報的バリアフリー」

情報的バリアフリーとは、障がいの有無にかかわらず、すべての人が等しく情報を得られる環境を整える取り組みです。視覚・聴覚に障がいのある方や、高齢者、外国人など、多様な人々が情報にアクセスできるよう、技術や制度の整備が求められます。

音声読み上げ機能や字幕付き放送、手話通訳サービスなどの技術的な支援だけでなく、ウェブサイトやデジタルコンテンツの設計においても、誰もが利用しやすい環境を整えることが重要です。

以下のように、日本でも情報的バリアフリーの取り組みは進んでおり、公共機関や企業でも対応が広がっています。

◆ウェブアクセシビリティの向上

・JIS X 8341-3(ウェブアクセシビリティ規格)に基づくウェブサイト設計の普及
・政府・自治体のホームページにおけるアクセシビリティ基準の強化
・公共機関や企業によるウェブアクセシビリティツール等のサービス提供

◆メディア・放送のバリアフリー化

・テレビ放送の字幕、手話通訳、解説音声の拡充
・映画や動画配信サービスでのバリアフリー字幕、音声ガイドの導入

◆デジタル技術を活用した情報提供

・AIによるリアルタイム音声認識、翻訳技術の発展
・スマートフォンアプリによる視覚障がい者や聴覚障がい者向け支援サービスの提供

2022年に総務省が発表した資料によると、在京キー5局と在阪4局の字幕放送付与率は100.0%、在名4局は99.9%、県域ローカル局(独立局を除く)101社は87.4%と報告されています。 ​

一方、手話放送の1週間あたりの放送時間は、在京キー5局が平均18分、在阪4局が13分、在名4局が24分、県域ローカル局は21分と、依然として放送時間が限られているのが現状です。

参考:視聴覚障害者等向け放送の状況について(総務省)

次に、社会の意識改革を促す「意識的バリアフリー」について詳しく見ていきます。

 

④社会の意識を変える「意識的バリアフリー」

意識的バリアフリーとは、障がい者や高齢者に対する偏見や誤解をなくし、誰もが共に生きる社会(共生社会)を実現するための取り組みです。物理的・制度的なバリアフリーが進んでも、社会全体の理解が伴わなければ、真のバリアフリーとは言えません

意識的バリアフリーの取り組みにおいては、学校教育や企業研修、メディアを通じた啓発活動などが重要な役割を果たします。

日本では、意識的バリアフリーの推進に向けた以下のような取り組みが活発化しています。

◆学校教育における障がい理解の促進

・小中学校での「福祉教育」の実施
・障がい者と接する体験学習の推進

◆企業・行政における啓発活動

・「障害者差別解消法」に基づく合理的配慮研修の実施
・企業向けダイバーシティ&インクルージョン研修の導入

◆メディア・文化活動を通じた意識向上

・ドラマや映画、ニュースなどでのバリアフリー意識啓発
・障がい者アスリートの活躍を伝える報道の増加(パラリンピックなど)

内閣府が2022年に実施した世論調査によると、「共生社会」という考え方を「知っている」と答えた人は48.5%にとどまり、19.3%の人は「知らない」と回答しました。また、「障がいのある人が身近で普通に生活しているのが当たり前だ」と考える人は64.8%に達する一方で、4.1%の人は「当たり前だと思わない」と答えています。

さらに、障がいのある人が困っているときに「手助けをしたことがある」と答えた人は61.9%でしたが、36.7%の人は手助けをした経験がないと回答しており、実際の行動につながる意識改革が求められています。

参考:「障害者に関する世論調査」の概要(内閣府)

今後、意識的バリアフリーをさらに推進するためには、教育の場での体験学習の充実や、企業におけるダイバーシティ研修の義務化などが求められます。社会全体で障がい者への理解を深めることが、バリアフリーの最終的な目標につながると言えるでしょう。

 

「ユニウェブ」はウェブサイトにおける情報的バリアフリーを実現するツール

情報的バリアフリーを実現するための具体的な取り組みのひとつとして、「JIS X 8341-3に基づくウェブサイト設計の普及」について述べましたが、弊社が提供するウェブアクセシビリティツール「ユニウェブ」は、これを簡単に実現し、すべてのウェブサイトにおいてウェブアクセシビリティ向上を支援するプラグイン型のツールです。

ユニウェブは、ウェブサイトにコードを一行追加するだけで、導入当日からサイト上で多彩なアクセシビリティ機能を活用することが可能になります。

◆ユニウェブの主な機能

自動解析機能
ウェブサイトのアクセシビリティ状況を自動で診断し、問題点を洗い出します。 ​
症状別プロファイル機能
​色覚特性や視覚障がいなど、ユーザーの症状に応じて最適な表示設定を提供します。 ​
豊富なカスタマイズ機能
​ボタンの色や大きさなど、ウェブサイトのデザインに合わせて柔軟にカスタマイズできます。 ​
多言語化機能
AI翻訳によりサイト内の日本語をリアルタイムで自動翻訳します。対応言語は60言語以上。

ユニウェブは、多くの企業や団体で導入されており、ウェブアクセシビリティの向上に寄与しています。本記事右下の「ピンクの人型アイコン」をクリックしていただければ、ユニウェブの多彩なアクセシビリティ機能を体験できるので、ぜひお試しください。

ユニウェブの導入により、誰もが使いやすいウェブサイトを実現し、情報的バリアフリーの推進に貢献することが可能です。

 

4種類のバリアフリーの理解を深めるために

バリアフリーは、物理的な環境の整備だけでなく、制度や情報、意識の面でも支援が求められます。本記事では4種類のバリアフリーについて解説しましたが、さらに詳しく知りたい方のために、関連する記事をご紹介します。

物理的バリアフリー:日常にあふれるバリアフリーの事例

物理的バリアフリーは、建物や交通機関の設備など、私たちが目に見える形で整備されるものです。例えば、スロープやエレベーター、ユニバーサルデザインのトイレなどが該当します。

これらの具体的な事例については、以下の記事で詳しく紹介しています。

◆関連記事

制度的バリアフリー:法律やルールで支える仕組み

バリアフリーを実現するためには、法律や制度の整備が欠かせません。特に「バリアフリー法」は、公共施設や交通機関のバリアフリー化を推進するための重要な法律です。

バリアフリー法の具体的な内容については、以下の記事をご覧ください。

◆関連記事

情報的バリアフリー:すべての人が情報を得るために

情報的バリアフリーは、視覚や聴覚に障がいのある方でもスムーズに情報を得られるようにする取り組みです。字幕放送や音声ガイド、ウェブアクセシビリティなどが含まれます。

本記事でも「ユニウェブ」のようなウェブアクセシビリティ支援ツールを紹介しましたが、情報バリアフリーの考え方をより深く知るために、以下の記事もご参照ください。

◆関連記事

意識的バリアフリー:社会全体の理解を深めるために

バリアフリーの実現には、物理的な設備や制度の整備だけでなく、「社会の意識改革」も不可欠です。そのためには、学校教育や企業研修などを通じて、多様な人々が活躍できる社会の仕組み作りが重要です。

特に近年、「インクルーシブ」や「ダイバーシティ」といった考え方が注目され、すべての人が対等に社会に参加できる仕組みを作ることの重要性が再認識されています。

これらの考え方について、より詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

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まとめ

バリアフリーには、大きく分けて「物理的」「制度的」「情報的」「意識的」の4種類があります。これらは単独で機能するものではなく、相互に補完し合いながら、すべての人が暮らしやすい社会を作る役割を果たしています。

物理的バリアフリーが進んでも、制度が整っていなければ、十分に活用されません。情報へのアクセスが保証されても、社会の意識が追いつかなければ、バリアフリーの本来の目的は達成されません。このように、バリアフリーの推進には多角的な視点が必要です。

バリアフリーは特定の人のためのものではなく、すべての人にとって暮らしやすい社会を作るための考え方です。日常の中でバリアフリーについて意識し、より多くの人がその推進に関心を持つことが、社会をより豊かにするための重要なアクションとなります。

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