音声アシスタントSiri・Googleアシスタント・Alexaの比較
2025/03/26

音声アシスタントとは、ユーザーの音声入力に応じて情報を検索したり、スケジュールを管理したり、スマートホーム機器を操作したりする機能を備えたAIアシスタントのことを指します。
スマートフォンやスマートスピーカーの普及に伴い、音声アシスタントは日常生活に欠かせない存在となりつつあります。
しかし、日本国内では音声アシスタントの利用者は徐々に増加しているものの、海外に比べて利用率はまだ低く、普及が進んでいるアメリカや中国と比べると、日常的に活用している人は限られているのが現状です。
今後、さらに音声アシスタントの実用性が高まることで、国内でも普及が進むことが期待されています。
現在利用されている、代表的な音声アシスタントとして以下の3つが挙げられます。
②Google アシスタント(Google)
③Alexa(Amazon)
本記事では、これらの3つの音声アシスタントを比較するとともに、実際の企業事例や筆者個人の音声アシスタントの使い方まで、音声アシスタントについて詳しく解説してまいります。
目次
音声アシスタント「Siri」「Google アシスタント」「Alexa」を比較
音声アシスタントは、スマートフォンやスマートスピーカーをはじめ、様々なデバイスに搭載され、私たちの生活をより便利にする技術として進化を続けています。その中でも代表的なものが、Appleの「Siri」、Googleの「Google アシスタント」、そしてAmazonの「Alexa」の3つです。
これらの音声アシスタントは、それぞれ異なる特徴を持ち、対応デバイスや活用シーンにも違いがあります。これら3つの音声アシスタントの違いを比較表としてまとめましたので、以下をご覧ください。
◆3種の音声アシスタントの比較
①Siri | ②Google アシスタント | ③Alexa | |
対応デバイス | iPhone、iPad、Mac、Apple Watch、HomePod | Android、Google Nest、Chromecastなど | Amazon Echo、サードパーティデバイス |
音声認識精度 | Appleのエコシステム内で高い精度を発揮 | Googleの検索エンジン活用で高い精度 | 多機能だが音声認識精度はやや劣る(一部のユーザーから改善を求める声) |
対応音楽配信サービス | Apple Music | YouTube Music、Spotify、Apple Music | Amazon Music、Spotify、Apple Music |
スマートホーム連携 | Apple HomeKitと連携 | Google Nestやサードパーティデバイスと連携 | 高い互換性と拡張性 |
プライバシー・セキュリティ | 可能な限り多くの処理をデバイス上で直接行うように設計(サーバーに個人情報を送らない) | Googleのセキュリティ技術を活用 | Amazonのセキュリティ基準を満たす保護機能を搭載(サードパーティはユーザーの個人情報にアクセス不可) |
各アシスタントの特徴とおすすめの使い方を解説します。
①「Siri」はAppleエコシステムとの統合性が強み
SiriはApple製品に最適化されており、iPhone、iPad、Mac、Apple Watch、HomePod などでスムーズに動作します。Apple Musicとの連携が強く、HomeKit対応のスマートホーム機器も音声で操作可能です。
また、プライバシー保護の意識が高く、音声データの処理はデバイス内で行われることが多いため、セキュリティ面での安心感があります。
◆おすすめの使い方
・AirPodsと連携し、ハンズフリー操作
・Apple製品を統一しているユーザー向け
◆改善したいポイント
・外部サービスとの連携が他のアシスタントに比べて少ない
②「Google アシスタント」は検索精度と対応デバイスの広さが魅力
Google アシスタントは、Googleの検索エンジンと連携しているため、質問に対する回答精度が非常に高いのが特徴です。
また、Androidスマートフォンをはじめ、Google NestやChromecast、スマートテレビなど様々なデバイスで利用できるため、マルチデバイス環境での活用に向いています。
◆おすすめの使い方
・GoogleカレンダーやGmailと連携したタスク管理
・スマートホームデバイスの操作(Google Nest、Chromecast)
◆改善したいポイント
・一部のスマートホーム機器はAlexaほど多様な連携がない
③「Alexa」はスマートホームとの相性が抜群
AlexaはAmazonのスマートスピーカーEchoシリーズを中心に、多くのスマートホーム機器と連携できるのが強みです。
また、スキル(拡張機能)を追加することで、様々な機能を後からカスタマイズできるのも大きな魅力です。
◆おすすめの使い方
・買い物リストやAmazonでのショッピング
・スキルを活用して、カスタマイズ性の高いアシスタントとして利用
◆改善したいポイント
・スマートフォン単体ではGoogle アシスタントやSiriほどの利便性はない
このように、それぞれの音声アシスタントには特徴があり、どれを選ぶかは「どのデバイスを使うか」と「何を重視するか」によると言えます。
例えば、Appleユーザーならエコシステムとの統合性が強い「Siri」、検索や情報取得が重要なら検索精度が高い「Google アシスタント」、スマートホームを本格的に活用するなら対応デバイスが豊富な「Alexa」など、それぞれの強みを活かせる場面で適切な音声アシスタントを選ぶのが理想的です。
次項では、iPhoneユーザーである筆者が実際によく使う、おすすめのSiriの活用法を紹介します。
筆者がよく使うおすすめのSiri活用法5選
筆者は長年iPhoneを使用しており、日常の様々なシーンでSiriを活用しています。
Siriはロック画面を解除せずに操作できるため、アプリを立ち上げる手間が省けスムーズに利用できます。特にiOS10以降は端末を手前に傾けるだけでスリープが解除されるため、ボタン操作なしでSiriを呼び出せる点も便利に感じています。
ただし、Siriは万能ではなく、長文の指示や曖昧な言い回しには対応しにくいことがあります。つまり、会話をするように操作することは難しいため、どちらかといえば決まった作業をサポートするツールとしての側面が強く、柔軟な対応には限界がある印象です。
こうした点を踏まえながら、筆者がよく利用しているおすすめのSiriの活用法を5つご紹介します。
活用法①画像検索
Siriにはウェブ検索機能がありますが、筆者の場合は画像の検索によく利用します。例えば「奥多摩の湖の写真を検索して」と指示すると、ウェブ上から該当する画像をいくつか提示してくれます。
視覚的な情報が欲しいときに、わざわざブラウザを開いて検索する手間が省けるので、とても便利です。
◆Siriによる画像検索

活用法②音楽の再生
SiriはApple Musicと連携し、音楽を再生することができます。筆者は、曲を指定することは少なく、そのときの気分や聴きたいジャンルで指示を出します。
例えば「リラックスできるJAZZナンバーをかけて」と指示すると、Apple Musicのライブラリから適した曲を選んでくれるため、プレイリストを指定しなくても最適なBGMを流してくれるため、仕事中やリラックスタイム、あるいは就寝前によく使います。
◆Siriによる音楽再生

活用法③多言語翻訳
Siriには翻訳機能が搭載されており、短いフレーズであれば即座に翻訳してくれます。
具体的な指示としては、まず「英語に翻訳して」と指示し、その後に「ニューヨーク行きの飛行機の搭乗ゲートは何番ですか?」と話しかけると、英語に変換された文章を音声とテキストで表示してくれます。
音声でも翻訳してくれるため、旅行先でのちょっとした会話や、外国人とのやり取りにも活用できる便利な機能です。
◆Siriによる英語翻訳

活用法④スケジュール機能
Siriはカレンダーアプリと連携しており、スケジュールの登録も音声だけで行えます。「明日の19時からオンラインミーティングをスケジュールしておいて」と話しかけると、カレンダーに予定が追加され、リマインダーの設定も可能です。
特に移動中や手が塞がっているときに、素早く予定を入力できる点が便利です。
◆Siriによるスケジューリング

活用法⑤メモ機能
何かをとっさにメモしておく場合にもSiriを活用しています。Siriはメモアプリやリマインダーと連携し、簡単なタスクを記録することができます。
例えば「明日公共料金の支払いをすることをメモしておいて」と指示すると、自動的にメモアプリやリマインダーに内容を保存してくれるため、忘れずに支払いを済ませることができます。
筆者の場合は、定期的な支払い管理やToDoリストの補助として活用しています。
◆Siriによるメモ

Siriは決して万能ではありませんが、活用方法を工夫すれば日常生活や仕事の効率を向上させることができるため、ぜひ色々と試してみてください。
それでは次に、音声アシスタントを実際に活用している企業の事例を紹介します。
ビジネスシーンにおける音声アシスタントの活用事例3選
近年、音声アシスタントは個人利用だけでなく、ビジネスの現場でもその活用が進んでいます。企業や店舗が音声アシスタントを導入することで、業務効率化や顧客満足度の向上といったメリットが得られます。
ここでは、実際に音声アシスタントを活用している3つの企業事例を紹介します。
事例①小売業における音声アシスタントの活用:カルフール(Carrefour)
フランスの大手小売企業カルフールは、Googleアシスタントを活用した音声ショッピングサービスを提供しています。
例えば、ユーザーが「OK、グーグル、グロサリーの買い物がしたい」と話しかけると、Googleアシスタントが起動し、カルフールのECサイトと自動で連携して商品をショッピングカートに追加します。
また、購買履歴から好みを学習し、適切な商品を推奨する機能も備えています。支払いまで音声操作で完結するため、ユーザーの利便性向上に大きく貢献しています。
事例②コールセンターへの音声アシスタント導入:みずほ証券
みずほ銀行では、AIチャットボットを導入し、問い合わせ対応の効率化を図っています。
これまでコールセンターで使われていた従来の自動音声応答システムは、顧客が案内を聞いた上でボタンをプッシュ操作すると、あらかじめ録音された音声が再生される仕組みでしたが、AIチャットボットは音声合成技術を活用しているため、顧客から受けた質問に対して柔軟に応え、自然な会話をしているような応対が可能になります。
これにより、応答時間の短縮と顧客満足度の向上を実現しています。
参考:コンタクトセンターの利用満足度向上と業務効率アップをめざして。シニア層も活用する電話のDX「AI音声ボット」。(みずほフィナンシャルグループ)
事例③社内業務の効率化:LINEヤフー株式会社
LINEヤフー株式会社は、個人向けサービスを中心に生成AIを活用しており、従業員約2万人にも生成AIアシスタントを提供しています。
社内アンケートの結果では、約7%の生産性向上が確認されており、サービスの品質向上および利便性向上を図っています。
参考:LINEヤフー、個人向けサービスを中心に16件で生成AIを活用 従業員約2万人に生成AIアシスタントを提供(LINEヤフー株式会社)
このように、音声アシスタントのビジネス活用は、小売業やコールセンター、社内業務の効率化など多岐にわたります。
これらの導入事例から、業務プロセスの効率化、人件費の削減、顧客満足度の向上といったメリットが確認されています。
音声アシスタントの国内利用状況は過半数が「使ったことがない」
ここで、音声アシスタントの利用状況について見てみます。下記グラフをご覧ください。
◆国内外の音声アシスタントの利用状況

このグラフは、株式会社イードが2019年に実施した調査結果を示すグラフです。音声アシスタントは世界中で普及が進んでいますが、国によって利用状況には大きな差があります。
グラフを見ると、日本では「1回も使ったことがない」と回答した人が51.2%と過半数を占めるのに対し、アメリカは16.9%、中国はさらに低い5.0%であり、日常的に使用している人の割合も日本は6.2%にとどまるのに対し、アメリカは25.1%、中国では28.4%に達しており、日本に比べて海外では音声アシスタントの利用が進んでいることがわかります。
次に、日本国内における音声アシスタントの利用率の変化を見てみます。
◆日本国内の音声アシスタント利用率の変化

こちらのグラフは、株式会社イードが2022年に実施した、全国の20~69歳の男女を対象としたアンケート調査の結果です。
これを見ると、2019年時点で「1回も使ったことがない」と答えた人は51.2%でしたが、2022年には45.5%に減少し、10回以上利用する人や日常的に使用する人の割合が増加しています。
これは、スマートスピーカーやスマートフォンの進化に伴い、音声アシスタントの活用機会が広がっていることによる変化だと考えられます。
しかし、日本では海外に比べて音声アシスタントの普及が進まない要因として、「話しかけることへの抵抗感」が指摘されています。下記グラフをご覧ください。
◆音声アシスタントに話しかけることに抵抗があるか

グラフを見ると、「とても抵抗がある」(14.7%)、「まあ抵抗がある」(27.6%)を合わせて42.3%の人が音声操作に抵抗を感じており、「全く抵抗がない」と答えた人はわずか15.7%にとどまっています。
これは、日本人特有の「外で使うのが恥ずかしい」という感情、あるいは「正確に認識されない」「使い方が分からない」といった課題が影響していると考えられます。
これらのデータからわかる通り、日本における音声アシスタントの利用率は少しずつ向上してはいるものの、海外に比べるとまだ低く、技術的な向上とともに、文化的なハードルをどう克服するかが今後の課題になると言えるでしょう。
それでは次に、音声アシスタントの最新の動向について解説します。
音声アシスタントの最新トレンド
近年、音声アシスタントは生成AIとの連携や音声認識技術の進化により、飛躍的な発展を遂げています。各社とも最新技術を取り入れ、ユーザー体験の向上を目指しています。
Googleは、生成AIモデル「Gemini」を活用した音声会話システム「Gemini Live」を発表し、画像や音声、文章などの異なる情報源を同時に認識・処理する「マルチモーダル」対応を実現しています。
例えば、ユーザーが自分の洋服の画像を共有し、「このジーンズに合う上着は何?」と質問すると、AIが適切なコーディネートを提案することなどが可能となっています。
Amazonも、生成AIを活用した新しい音声アシスタント「Alexa+」を発表しました。エージェント機能が追加され、ユーザーの複数の指示を連続して処理し、自律的にタスクを実行する能力を備えています。
これにより、従来の単一リクエスト処理から大きく進化し、日常的なタスクの実行がよりスムーズになりました。
そして、日本でのリリースが心待ちにされていた、Appleが提供する独自AI技術である「Apple Intelligence」ですが、当初、2025年4月にiOS 18.4のリリースとともに日本語対応が予定されていましたが、技術的な課題により、これらのAI強化機能のリリースは2026年に延期されることが報じられています。
Apple IntelligenceによりSiriの機能は大きく強化されます。画面上に表示されている内容を理解できるようになったため、例えば、画面に表示されている住所を認識して「この住所を連絡先に登録して」などの指示ができるようになります。
また、写真アプリから希望の写真を呼び出して、そのまま声によって編集するといったことも可能です。
このように、音声アシスタントは、生成AIとの統合によって従来よりも高度な理解力や柔軟な応答が可能になりつつあります。今後も、ユーザーの意図をより正確にくみ取り、実用性の高いアシスタントへと進化していくことが期待されます。
特に、Apple Intelligenceをはじめとする最新技術の導入により、SiriやGoogle アシスタント、Alexaがどこまで進化するのか、注目が集まっています。
参考:グーグルVSアップルの「次世代音声アシスタント」戦争の現在地 グーグルに軍配、アップルは大きく後退なのか(J-CASTニュース)、アマゾンの新AI対応アシスタント「Alexa+」–競合のAIに対する3つの強み(ZDNET Japan)、アップル、「Siri」のAI機能強化が2026年にずれ込む見通し 競争力低下との指摘(JBpress)
まとめ
音声アシスタントは、私たちの生活をより便利にするツールとして進化を続けています。日本国内ではまだ普及率が低いものの、徐々に利用者が増え、企業でも業務の効率化や顧客対応の強化に活用されています。
今後、音声アシスタントはますます自然な会話ができるようになり、スマートフォンだけでなく、家電や車、ビジネスシーンなど、あらゆる場面で活躍する存在となるはずです。新たな技術の発展とともに、どのような進化を遂げるのか、引き続き注目していきたいところです。